閉塞性乾燥性亀頭炎におけるマローン法外尿道口形成術による長期成績

Treatment of urethral meatus stenosis due to BXO:Long-term results using the meatoplasty of Malone  
Actas Urologicas Espanolas.2011;35(8);494-498
A.Treiyera*, P.Anheuseb,B.Reischb,J.Steffensb
a Urology Department,Universidad del Saarland,Homburg/Saar,Alemania,Germany
b Urology Department,Hospital St.Anatonio,Eshweiler,Alemania,Germany

a, ドイツ・ハンブルグ サアランド大学泌尿器科
b, ドイツ・エスクワイラー 聖アントニオ大学泌尿器科
Key words ;硬化性苔癬、尿道口狭窄、再建、手術、尿道

原著論文 こちら

[ 要 旨  ]
目 的 : BXOを有する成人男性、男児のうち、外尿道口の重症狭窄例における治療症例を紹介する。
具体的な方法 : 5年間で合計21名の患者がマローン法による外尿道口形成術を受けた。患者の平均年齢41.7歳 (範囲7~75歳)であった。平均術後フォローアップ機関は40.8ヵ月(範囲6~54ヵ月)。外科的処置は、外尿道口腹側の小切開から背側への広範囲な切開をおこない、逆V字型切開部の審美性を保つ。術後、外科的手法の機能的および美容的結果についての評価を、書面によるアンケートによって全ての患者で実施した。
結 果 : 術後合併症や尿道狭窄の再発は記録されなかった。 術後合併症や尿道狭窄の再発はみられなかった。回答数は患者18名(85.7%)であった。機能面の結果には全ての患者が非常に満足していた。うち15人(83.3%)も審美的な結果には非常に満足していた。
結 論 : マローン尿道口形成術は、外尿道口狭窄治療のためには簡単で良い方法といえる。尿道下裂を発生させることなく良好な術後結果を達成するものである。
2011.AEU.Elsevier スペイン報告。

 緒言  
  BXO(乾燥性閉塞亀頭炎)は病因不明で、健康診断によってもしばし気づかれないものがある皮膚の慢性疾患として知られている。この病気は割礼を受けた男性には発症しない: 外傷、器具の使用、生殖器穿孔、生殖器異常(例:尿道下裂)とも関連して、扁平上皮癌の発生と関連している1)。この患者群では、発生率データは完全に明らにはなっていないが子どもにも起こる可能性がある2,3)。BXOは症例の3割で尿道に影響があり、尿道口狭窄が悪化し、狭窄は舟状窩を含み広範囲の尿道に及ぶ2-5)。本疾患の主な症状は、痛み、局所的な陰茎の不快感、痒み、痛みを伴う勃起、残尿である。疾患の外科的処置は再発率が高い。加えて患者は、再手術、術後再発では多くの場合で、QOLが低下したことを報告する。
 外科的選択で有効なものとしては、外尿道口形成に使われるマローン法尿道口形成術がある。本法は2004年に発表された6)比較的新しい技術である。筆者らの病院で患者21人に対して実施され、本法の審美性評価は高い評価を報告している。

 

 具体的な方法 

  重度の外尿道口狭窄を有し、舟状窩の拡張がない患者に対して本法を行った。2004年10月から2009年4月までの間で、患者21人に対してマーロン法を行った。患者の平均年齢は41.7歳(7~75歳)。症例のうち5例(23.8%)は7~12歳の小児であった。これら小児の全例において、従来法による術後、外尿道口狭窄再発を起こしていた。           
 ほか成人7名も、過去12回の手術歴(尿道拡張3例、尿道切開術9例)があった。成人患者全体の中で、手術療法の既往がなく、手術を受けたものはわずか9名であった。男性12名において、BXO特有の所見が確認されている。ある39歳の男性は、BXOを原因とした重度の外尿道口狭窄に続発する水腎症で、両側性慢性腎不全と診断されている。患者全員が外科的処置のため入院している。膀胱留置カテーテルは術後24hで除去、エコーで膀胱内残尿がないことを確認して退院している。      
 患者のフォローアップは中央値3.4年(6~54ヵ月)。フォローアップ中患者は、形成尿道口部位での再狭窄を除外するアセスメントのため、診察と少なくとも1度は身体検査を受けている。加えて全患者対象に、審美的結果、性生活および術後の排尿状況評価についてのアンケートを行っている。


 術 式 
   マローンの報告では、手術の禁忌として亀頭海綿体の海綿状突起または線維性に拡張した重症BXOが指摘されており、そのようなケースでは新尿道形成術をしなければいけない6)。外科医の見解としては、外科的処置は陰茎基部に止血帯を使うことで、適切な止血を行えるとされている。 4-0バイクリル縫合糸は狭窄した外尿道口の両側へ配置する。次いで尿道腹側へ陰茎下尿道を作らずに切開をする。この切開は、解剖学的導入として尿道口を少し拡大し、鉗子を用い、BXOの舟状窩への拡大の程度を評価することを目的としている(fig.1)。 浸潤が遠位尿道まで広範囲に及ぶ場合は、口腔粘膜皮弁による尿道形成が推奨される5,7)
  尿道口の限局性狭窄または、限局性BXOを有する症例では、マローン法による外尿道形成術をによって治療をしていく。本法は、この切開部を含め亀頭に達する深部背側尿道切開を行う(fig.2)。

図1 (A) BXOによる典型的な外尿道口狭窄 (B)侵襲度評価のためBXOの舟状窩側への腹側切開
図2(A)と(B) は深い背側切開のため、亀頭に達する途中経過。.

 

 

 

 

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画像1 (A) BXOによる典型的な外尿道口狭窄 (B)侵襲度評価のためBXOの舟状窩側への腹側切開
画像2 (A)と(B) は深い背側切開のため、亀頭に達する途中経過。

  モノクリル6-0縫合糸を用いて、尿道粘膜を亀頭上皮に縫合する。背側の切開と腹側の切開を組み合わせることで尿道口の良好な開放が得られるものの、縫合糸に起因する亀頭の審美性な結果は脆弱である。しかしながら、このような側面は、尿道より上、亀頭のレベルで逆V字切開を行うことによって修正することができる(fig.3)。 この切開でVの頂点は、背側尿道切開の最短部分に非常に近い。次いで、切開縁が深くなる。この方式で、これら切開縁の内側各は6-0モノクリルで連続的に縫合することで、尿道遠位背側は、以前の縫合部の欠陥を修正するように構成された(fig.4)。

画像3 (A) モノフィラメント6-0糸による亀頭上皮への尿道粘膜縫合。 (B)亀頭部分の逆V字切開。 
画像4 (A)と(B)では、モノフィラメント6-0糸を用いて逆V字切開の内側を縫合している。


 

 

  画像5 (A)と(B)では、同様の吸収性糸を用いて逆V字切開の外側を縫合している
  画像6(A)膀胱カテーテルを留置した術直後の状態 (B) 術後8週間。


  逆V字切開縁の外側縁は同じ種類の糸を用いそれぞれを縫合する(図5)。この方法による最終的な結果は、亀頭レベルの同じ部位で広い外尿道口を確保することである(図6)。


 


 結 果
  本例では、術中又は術後暫く後に合併症が生じている。尿道カテーテル抜去後、全患者において排尿後残尿なく自発的排尿が得られ、満足している。いずれも尿道レベルで再狭窄はあったものの、尿道瘻孔は生じなかった。
 術後フォローアップアンケートでは、患者18名からアンケートを回収できた。いずれも尿道口レベルで再狭窄はあったが、尿道瘻孔はなかった。全ての患者から、術後排尿は良好と報告されている。患者18人中15人(83.3%)は、術後の審美性に満足している。 いずれの症例でも、性生活の質は術後に変化した。同様に、患者15人(83.3%)は、尿勢の不規則性は無かったとしている。1人(5.5%)はしばし太い流れが生じることを報告している。2例(11%)において、頻繁に尿勢の不規則性が報告された。術後検査でどの患者においても再発は認められなかった。

 考 察
  BXOによる尿道の外科的処置は、再発率が高率に見られる。海外の文献では、あらゆる種類の尿道狭窄治療に役立つ、様々な外科的手法が公開されている3-5,8,9)。これによれば、尿道の狭い領域を頬粘膜皮弁により置換することが、長期的にみても良好な結果を得られることが明らかになっている3,5,9)。その一方で、尿道口レベルで局所狭窄の治療を論じている出版物は殆ど見られない3,6)
  尿道口狭窄の外科的処置を行う場合は、機能面だけでなく審美性も考慮する必要がある。その際は、苦痛なく排尿が可能となる亀頭の位置に尿道口を確実に確保するべきである。 このように、単純な腹側切開外尿道口形成術、複数の変形尿道形成術および尿道口の拡張など、外尿道口狭窄を解決する方法は侵襲的である3,10-13)。これらの技術が標準的で、特に背側尿道や尿道口の重度狭窄を伴い、上記の基準を満たさない場合は再発率が高い。 この概念は、尿道拡張や従来型の尿道口形成術既往歴のある患者の57%が長期成績が不良なことが我々の例でも確認されている3,13)
  また、残念ながら外尿道口を含む尿道狭窄の治療法として他に新しい外科的代替技術の長期的モニタリンについては、世界的にみても殆ど例がない10-13)。この治療上のジレンマに対する1つの解決法としては、腹側および背側を組み合わせることで広い尿道口の確保が可能になることをマローンが報告している(2004)6)。同時に、亀頭レベルでの逆V字縫合は、外尿道口の位置を特定することを可能にし、瘻孔形成を避け、術後の審美的結果を確実に満足させる効果がある。
  非常に興味深いことに、私達の事例で一部の患者は亀頭の大部分に及ぶBXOを有していたが、筆者らの事例とマローンが最初に提示さいたいずれでも、この外尿道口形成術による尿道再狭窄の事例はなかった。 根底にある病因は多くの場合、数年後に、以前手術しても再狭窄を起こすためこの知見は、患者の短期的な観察期間を超えて重要である。この点についてVennとMundyは、包皮を用いて尿道形成術を受けた患者12人の5年後追跡調査では、全例で再発し再手術に至ったと報告している11)。最近の国際的な研究によれば、Kulkamiらは男性わずか15人(全研究集団の7%)でも尿道口形成術後の成功率が80%であったとされる5)
  スペイン語で初めて報告されたこのマローンの報告は、BXOが原因であったとしても尿道狭窄治療には理想的な基準を満たしていることを示唆している。 比較的短期間でのフォローアップをしたこの外科的処置は、効果的で再発のない手技である。 我々は、マローンの尿道口形成術が審美的にも機能的にも優れた結果になることを経験している。しかし、この重要性を適切に定義するためには、より多くの患者でより長い術後のフォローアップが必要であり、尿道狭窄の外科的処置において将来的には、革新的な処置が必要になるであろう。

 

= 利益相反 =
  利益相反なし

= 参考文献 =
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