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はじめに:遊離前腕皮弁陰茎形成後に発生した、一部の皮弁壊死に対する、尿道再建の方策を呈示する。この知覚付きTube-in-tube遊離前腕皮弁による2例では、皮弁一部の壊死が形成尿道の外側全長にわたり発生した。新しい尿道形成は、血流豊富な組織を有する対側の遊離前腕皮弁を用いた。本件では皮弁由来の合併症は見られなかった。術後12ヶ月で、いずれの患者も立位排尿に至っている。形成陰茎の審美性と触覚、性感の維持についての満足度は良好な結果を得ている。2013年に筆者らは、形成尿道外側の縫合壁を再構築する本法により、新生尿道の保全について良好な結果を得られたため、これを報告する。
ローレンA.H D.ラルゴ。ドリス・バブスト。レト・ウェッツテイン。マーティン・ハウグ。ダニエルF。ディークJ。
遊離前腕皮弁(RFF)はFTMの陰茎形成(Phalloplasty)においては標準的な術式とされている。 別の症例報告でも、RFFの実効性、審美的に優れていること、機能性にも満足いく結果が確認されている。この手術における大きな目的は、立位での排尿と審美性、性的感覚の保全までを1段階の手順で済ませることであろう。形成陰茎の性感が戻る術後6~12ヶ月から、性交に必要な勃起補助プロテーゼの移植が可能となる。
可能性のある早期・晩期合併症は、動・静脈吻合部の異常、血栓症、部分または全体の皮弁損失といった合併症に加えて、泌尿器系合併症として瘻孔、狭窄等、複数の泌尿器科の介入を必要とする。
RFFのデザインは複数あるが、チャンまたはドットリーブのデザインはtube-in-tubeの形成術で頻繁に使用されます。具体例として、分割皮膚移植による尿道形成(STSG),全層皮膚移植(FTSG)、もしくは膣粘膜移植が行われてきた。
ここに、陰茎形成術後(chang式)、新生尿道全長に起こった皮弁部分壊死の2症例を報告する。新生尿道の再建にあたり我々は、最初にRFFを採取した腕とは対側からの遊離皮弁で修正を行った。加えて、RFF術後の合併症文献のレビューも行った。
症例報告
症例1
患者はヘビースモーカーの30代のFTM。内視鏡下にて子宮と付属器は摘出済み。膣切除と同時に、左前腕からの知覚遊離皮弁(chang式)にて陰茎形成を行った。顕微鏡下にて、右総大腿動脈と橈骨動脈の端々吻合を行った。伴走静脈と皮弁の皮下静脈は大伏在静脈の枝の上方へ端々を行った。前腕からの神経2本のうち1本は腸骨鼠径神経に接合し、もう1本は性感維持のため陰核背神経に接合した。
術後24時間は未分画ヘパリン(10000単位)を使用し、術後早期は良好に経過して予防的分画ヘパリン(5000単位)投与を継続。アセチルサリチル酸も術後1日から投与している。皮弁は熟練した看護師がドプラーにて術後24時間までは毎時間、以降術後4日目までは3時間毎にモニタリングを行った。術後第二週目の後半で、形成陰茎の裏側、皮弁縫合線の全長幅2cmに至る皮弁壊死が出現した(図1左)。
形成尿道の全損失と、形成陰茎の腹側外側の裏側一部にまで壊死が及び、デブリーメントを行った(図1右)。次いで、陰茎と壊死した尿道の再建用皮弁として、対側上肢から遊離前腕皮弁を採取した。無傷の右前腕からChang式デザインを短縮し、修正用皮弁として採取した: 尿道用皮弁として3.5cm×14cm、、0.5cm幅の上皮切除部分(注:縫い代)をおいて、陰茎再建用として3cmx11cmをデザインした(図2)。
形成尿道は皮膚で17Frフォーリーカテーテルを包み、上皮切除部分を上にして閉創した。尿道吻合の後、最初の形成陰茎へ残りの皮弁を巻きつけるようにして縫合した。2番目の皮弁は十分な周囲径を保ち、元ある形成陰茎に縫合された(図3,4)。微小血管吻合は、左鼠径部にある大腿動脈-橈骨動脈端々吻合部へそのまま接続した。皮弁にある3本の皮下静脈と伴走静脈は、端々吻合で大伏在静脈の枝の上へ接続した。神経再建は行わなかった。皮弁採取部は、全層皮膚移植片で全体を覆った。外科手術の要約は図5の通りである。
術後薬理学的、皮弁スクリーニング手順としてRFFを適用し術後は経過良好だった。皮弁関連合併症はなかった。退院後、外来で1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で検査を継続して行った。そうして12ヶ月経過後には、患者の主観的評価を評価スケール(悪い、まぁまぁ、良い、素晴らしい)で調査したところ、形成陰茎によい印象も持っている(図6左上と中左)。触覚、性的とも良好な感覚との評価を得ている。
泌尿器科医による尿道造影像の結果、尿道吻合部の狭窄のため術後4ヶ月で尿道を開く手術が必要とされた。2ヶ月後には、狭窄再発のため別の尿道が必要になった。12ヶ月後には立位での排尿が可能となった。(写真6下図左)
皮弁採取部側の合併症はなし。手首の動きと強さは損傷なく、関節可動域も良好。神経系統の合併症は見られなかった
症例2
48歳のFTM、骨形成不全症と高血圧の既往歴。ヘビースモーカーであり重度のCOPD。本事例では、子宮摘出と付属器摘出前に膣切除が実施済みだった。
筆者らはchang式で、右前腕からの遊離前腕皮弁によるPhalloplastyを行った。顕微鏡下にて右鼠径部へ接続をした:橈骨動脈は大腿動脈を含む血管へ、大伏在静脈の枝と皮弁の3静脈はそれぞれ端々吻合をした。前腕の神経2本は、伴走静脈と皮弁の皮下静脈は大伏在静脈の枝の上方へ端々を行った。前腕からの神経2本は腸骨鼠径神経と、もう1本は陰核背神経にそれぞれ接合した。
薬剤管理と皮弁監視プロトコールは症例1と同様。
術後11日目。皮弁の一部に見られた壊死が、皮弁接合部境界の横一面に拡大してきた。デブリによって形成尿道の全部損失に至った。
尿道、陰茎再建のため、同様のアプローチをとることにした。
修正手順は同様で、chang式前腕皮弁を対側の左前腕から採取した。皮弁のサイズは、症例1と同様で、(図2)左鼠径部へ接続した:橈骨動脈は総大腿動脈分岐の一つへ端々吻合。皮弁にある3本の皮下静脈と伴走静脈は、端々吻合で大伏在静脈の枝の上へ接続した。神経再建は行わなかった。術後経過は良好。皮弁関連の合併症もおこっていない。
尿道吻合部のごく細い狭窄のため10ヶ月後に手術を行った。ドナーサイトは移植皮で全体を覆った。手術の概要を図5に示す。術後12ヶ月、患者は立位での排尿が可能となっている。形成陰茎の外観は良好、触覚と性的感覚も優れているとの自覚がある(図6右囲み記事)。皮弁採取部の合併症は報告されていない。
考察
陰茎形成術における報告では、、皮弁部分壊死は7~11%程度の発生となっている。ドーナーらは316例のうち23例(7.2%)で、高リスクは喫煙者と大きな形成陰茎と吻合修正後に多いと報告している。これら23例の患者のうち15人(63%)で創面切除、および皮膚移植による二次的閉鎖が必要とされた。皮弁部分壊死は高頻度で周囲へも影響が及び、chang式の形成尿道では橈尺骨境界双方に関与している。つまり尿道の露出または形成尿道の壊死により、尿道機能不全となる可能性がある。tube-in-tube内の部分的な皮弁壊死を起こす要因としては、皮弁幅と尿道部分の皮弁を2重にしていることがリスクとなり得る。また術後のうっ血による皮弁腫脹を起こすことがある。この事例ではどちらも、骨形成不全症や症例2の高血圧と同様にヘビースモーカーであったことが、皮弁壊死の発生リスクに加えることができる。最初の事例では、膣切除を同時に行ったため手術時間が長くなり、それによる血流の途絶が、本事例のリスクを増大させた可能性がある。リスク回避策としては、子宮摘出と付属器摘出と同時に膣切除を行う方法を選択する方法もある。皮弁部分壊死は結果として、形成尿道の完全損失と陰茎腹側の縫合外側壁部分的損失を招いた。修正した2つ目のchang式遊離前腕皮弁は両組織の再構成のために十分な血流を確保した。対応策としての形成尿道再建用の遊離皮弁の代わりに、カテーテル巻き込んだ皮膚による植皮を使うこともできる。しかし、皮弁のような血管を有する組織に比べて、植皮では拘縮による尿道狭窄のリスクが高くなる。また、陰茎外側縫合周囲の部分損失による周径減少と皮弁自体の容量損失には対処できない。筆者らの知る限りでは、文献中でRFFによるPhalloplasty術後の形成尿道と全損失における治療に関するデーターは見当たらない。
尿道下裂での尿道再建として、遊離前腕皮弁の使用法を最初に報告したのはハリソンである。:Daberningらは、尿道再建とカテーテル入り前腕皮弁で亀頭を含む陰茎再建術を行ったいくつかのケースを9人の患者で報告している。3人は皮下癌による陰茎切除、6人はSRS術後の尿道形成の失敗例である。陰茎形成の6例のうち3名はbird-wing-abdominal
flapで、もう3名は腹直筋皮弁で形成されていた。事例は複数回の修正後の再狭窄だった。全ての患者で、形成陰茎の皮膚には十分な余裕があった。患者2名は、尿道吻合部の狭窄が起こり、局所皮弁の再形成を必要とした。術後6ヶ月では、全ての患者が立位排尿をできるようになっている。遊離前腕皮弁の部分的な皮弁壊死を防ぐために、chan式への代替案を考慮するのも選択肢の一つとして挙げてもよい。chang式の変形であるゴットリーブ式では、尿道の皮弁の一部は尺骨から構成されて、皮弁中央部に尿道が位置するような設計になっている。皮弁幅があるため、(尿道用として)二重に曲げる必要がない。更に、殆どの患者は、形成陰茎でも目立ちやすい背側に、追加した創痕が残ることを好まない。2重に皮弁を重ねること、皮弁幅を確保する負担を減らす他の可能性としては、分割皮膚移植、全層皮膚移植もしくは膣粘膜を尿道へ被せる方法がある。カテーテルを使用して尿道を準備すると、多くのケースで皮弁の部分壊死の発生率が変わってくる。しかし文献レビューでは、部分的な皮弁壊死で有意に発生率確率が下がることは認められない。キュンチャーとハルマンらは、全層皮膚移植による尿道の事前準備を行った前腕橈骨皮弁の15例では、このような合併症の発症がなかったと報告している。これに対してシャフとパパドプロスによる大規模症例報告では、事前の尿道準備(膣粘膜または分層植皮)を行った陰茎形成での皮弁部分壊死は16%(31症例中5名)、遊離腓骨皮弁と遊離前腕皮弁では16.6%(6症例中1名)だった。
ファンらは、遊離前腕皮弁において、従来のtube-in-tubeによる皮弁と、膣粘膜を利用した全層植皮を比較した。皮弁一部壊死の発症は、伝統的な皮弁による形成グループは28症例のうち6名(21%)に発生しているが、事前に尿道を植皮にて準備したグループでは、28名いずれの患者にも発症はみられなかった。最近の研究によるとソンらは遊離前腕皮弁において、全層植皮にて尿道の準備を行った19症例のうち3名に部分的皮弁壊死(15.8%)がみられたと報告している。有効性が証明されていない。ファンらの報告では、古典的tube-in-tubeによる術後患者の79%に尿道皮膚-瘻(28症例中22名)が、同じく術後患者の14%(28症例中4名)に尿道狭窄発生に見られている。植皮による尿道準備の例では、狭窄発生率は11%(28症例中3名)、尿道皮膚瘻は57%(28症例中16名)だった。全ての尿道瘻孔は形成尿道の屈曲部と下垂部の接続部で発生しており、膣粘膜による植皮を事前に行った尿道での発生はみられなかった。Doornaertらによる、古典的tube-in-tube遊離前腕皮弁では、患者の40%(316症例のうち127名)に泌尿器科的合併症が報告されている。瘻孔は6%(316症例のうち80名)、狭窄は6%(316症例のうち20名),混合型合併症は8.5%(316症例のうち27名)であった。瘻孔では66%(80症例のうち53名)の自然治癒がある一方で同時に、42.5%(127症例のうち54名)の患者では尿道機能障害を回復するために手術を必要としている。キュンチャーとハルトマンらは、 全層皮膚植皮による事前尿道準備での遊離前腕皮弁では15症例(53%)に尿道吻合部の瘻孔が認められたとしている。骨付き遊離前腕皮弁にて、事前の全層皮膚移植尿道で陰茎形成をした19症例において、ソンらは瘻孔1例(5.3%)、狭窄5例(26.3%)、複合型9例(47.4%)を観察しており、会陰部の筋皮弁を含む多層性の尿道吻合で、吻合部を強化している。シャフとパパドプロスは、骨付き遊離腓骨皮弁による31症例と、事前に尿道準備をした遊離前腕皮弁6症例では、37症例中尿道狭窄を伴うもの32.4%、うち更に瘻孔を合併したものが16.2%(37症例中で6名)と報告している。瘻孔を起こした6例のうち5名は、事前の植皮による尿道延長接続部分で発生していた。いずれの症例でも、泌尿器科的合併症は尿道切開が避けられない。術後12ヶ月ではどちらの患者も、良好な形成尿道のお陰で立位排尿が可能となっている。
泌尿器科的合併症の発症に救援手順が関連しているとは思わないが、般的には、陰茎形成に比例して高確率で発症している。
デメリットとしては、前腕皮弁採取後の採取部の罹患率がある。皮弁採取後に全層・分層植皮で不完全に覆っているものの、機能的損傷、手の腫脹、知覚異常、そして神経腫の形成が起こっている。また前腕の傷は、しばしトランスジェンダーと認識されるスティグマにもなる。本事例では、皮弁採取部の合併症や併存した問題がないか、発生したかのどちらかである。いずれの患者の傷痕も、大きな問題として認識されていない。
Chang式の知覚付き前腕皮弁では、陰茎形成術後の形成尿道完全壊死を起こした、この2症例をまとめると、我々はもう一方の前腕皮弁を使用して、形成陰茎の外側を再建し、尿道を確保することに成功した。12ヶ月後にはいずれの患者も、立位での排尿に至っている。外観上も審美的に優れ、満足した評価を得ている。感覚はどちらも優れた触覚、性感の知覚があることを報告している。は損なわれていない。我々の経験からこのような一治的尿道瘻造営術でにおいては、これらの方法が大変貴重な代替的手段となる。
そういったことを予防する更なる技術革新や、少なくとも主な欠点である部分的な皮弁壊死の軽減策がtube-in-tubeによるPhalloplastyで標準的に必要とされていとは明らかです。そこでflap-in-flapの主な用途を提案すると例えば、「知覚付き遊離または有茎前外側大腿皮弁との組み合わせによる陰茎形成」ほか「知覚付き前腕遊離皮弁または尿道形成用の有茎鼠径皮弁」があげられる。現在考えられるFlap-in-flapアプローチで唯一の少数例からも、より安全で、実現可能な技術の評価が必要といえよう。
、皮弁採取部の合併症や併存した問題がないか、発生したかのどちらかである。いずれの患者の傷痕も、大きな問題として認識されていない。
Chang式の知覚付き前腕皮弁による陰茎形成術後の形成尿道完全壊死を起こした、この2症例をまとめると、我々はもう一方の前腕皮弁を使用して、形成陰茎の外側を再建し、尿道を確保することに成功した。12ヶ月後にはいずれの患者も、立位での排尿に至っている。外観上も審美的に優れ、満足した評価を得ている。感覚はどちらも優れた触覚、性感の知覚があることを報告している。は損なわれていない。我々の経験からこのような一治的尿道瘻造営術でにおいては、これらの方法が大変貴重な代替的手段となる
そういったことを予防する更なる技術革新や、少なくとも主な欠点である部分的な皮弁壊死の軽減策がtube-in-tubeによるPhalloplastyで標準的に必要とされていとは明らかです。そこでflap-in-flapの主な用途を提案すると例えば、「知覚付き遊離または有茎前外側大腿皮弁との組み合わせによる陰茎形成」ほか「知覚付き遊離前腕皮弁または尿道形成用の有茎鼠径皮弁」があげられる。現在考えられるFlap-in-flapアプローチで唯一の少数例からも、より安全で、実現可能な技術の評価が必要といえる。