「Management of Long-Segument and Panurethral Stricture Disease」

原著論文こちら

Francisco E.Martins(1,2)  Sanjay B.Kulkarni(3) Pankaj Joshi(3) Jonathan Warner(4) and Natalia Martins (2)
 1Departmen of Urology,Hospital Santa Maria,University of Lisbon,School of Medicine,1600-161 Lisobon,Portugal
 2 ULSNA-Hospital de Portalegre,7300-074 Portalegre,Portugal
 3 Kulkarni Reconstructive Urology Center,Pune 411038,India
 4 City of Hope Medical Center,Duarte,Ca 91010,USA
  2015年10月到着 2015年11月受諾

本論文はCreativbe Commons Licenseによるオープンアクセス配信、原著引用については配布制限をしていない。

  前部尿道における長い狭窄、もしくは全尿道狭窄症の要因は解剖学的に異なる。 球部狭窄と比べて前部尿道(振子部)狭窄は比較的よく遭遇する病変であるが、再建泌尿器科医にとっては困難な手術である。病因は、年齢、地理的条件によって変わるが、硬化性苔癬(LS)は世界の一部の地域で多く発生している。重要な原因として一般的なものは、尿路手術前の内視鏡的操作、外傷、炎症および特発性(尿道カテーテル、膀胱尿道鏡検査、経尿道切除術)の原因がある。医原性要因は西洋や先進諸国で多く、硬化性苔癬(LS)はインドでポピュラーな原因である。外科手術手技、派生した手技のなかでは、一期的に留まらず段階を分けて行ったり、組織移植を行うことで、長期的な成績を改善したものが世界各地で行われている。一期で済む最小限の侵襲的手技は、単一の会陰切開によるアプローチをしており、その有効性と再現性から広く支持を得ている。成功事例に関わらず、再建泌尿器科医は経験をもとに、現在できる治療法から、患者の個別性に合わせた方法を選択することに精通するべきである。 


1、序論
 再建泌尿器科領域において、長い範囲の尿道狭窄管理は課題となっている。尿道狭窄の外科的治療は、組織周囲の病変、位置、長さ、病変の密度および線維化の状態に応じて変わる1~3)。 尿道球部に起こる狭窄治療はほぼ明確化しており、切除および端々吻合や、小片植皮尿道形成などの影響を受けやすい4)。長い範囲の尿道狭窄または全狭窄は一般的でなく、文献もそう多くない。このような症状の治療には、狭窄の原因として尿道手術以前の問題、尿道板の質、異なる部位から利用可能な自家組織を採取して使う皮弁・植皮、経験と専門知識、および泌尿器科医の好みや、医師がもつ移植技術の専門性の高さなど、いくつか検討課題がある5)。硬化性苔癬(LS)や乾燥性閉塞性亀頭炎(BXO)は、治療や予後に関連した長期のフォローアップにおいて特徴的な問題がある6-10)。このように複雑な条件ゆえに、治療パラダイムの大きな変化が必要とされることがある。しかし複数ステージの再建で、特定の条件下では、外科医によって相応しくない尿道組織が使われることがある。 LSは一期的再建に良好な結果をもたらす。更に、長い範囲の狭窄では尿道再建だけでなく、排尿機能、勃起、射精やオルガスムス、性的機能と外見の審美性までをできる限り保障する。
 成功率から現在の外科的選択肢として考えられている合理的な方法は、シングル又は複数回による再建術、皮弁、植皮、また両方のみ合わせで、極端な例として過剰な(長い)再建を希望しない患者には、会陰尿道造瘻が最善の解決法になることがある。


2、材料と方法
  MEDILINE/PubMedデーターベースとGoogle検索では「複雑な尿道狭窄」「長い範囲の尿道狭窄」「全尿道狭窄」「硬化性苔癬」「口腔粘膜」そして「尿道形成」などのキーワードを使用し、国際文献のレビューをおこなった。1990年から2015年の間に英語で公開されたオンラインレビューのみを確認した。

3、疫学、病因および発症機序
 およそ男性の尿道狭窄は何世紀に渡り、世界中でよくみられる疾患である。最初に知られる尿道拡張の記録はShusrutaが紀元600年頃に残している11)。19世紀の専門家の意見では、人口比で成人男性の15~20%程度の発生率と推定される12)。英国NHSによると、21世紀には毎年16000人以上の男性が尿道狭窄による入院をして、うち10000~12000人が外科的治療を必要としている12)。英国の平均推定有病率平均からこれをみると、若年男性では10人(10万人)の有病率が55歳までに倍増し、65歳以上の男性では100人 (10万人あたり)以上と上昇している。アメリカでは、男性の入院患者は尿道狭窄が5000人、1992年から2000年では毎年150万人が受診をしている。発生率から影響を受けやすい集団は約0.6%と推定される13)。米国男性が尿道疾患にかける医療費は概算で2000年に190万米ドルを突破している13)。特に全尿道狭窄ははるかに少なく、世界的にみても尿道狭窄の発症率を確実に評価する方法はない。268人の患者を対象とした最近の研究では、全尿道狭窄および前部尿道狭窄患者36名(13.4%)が報告されている。単一施設で外科的に治療されていた全狭窄例で、より最近の懐古的な調査で全尿道狭窄が4.9%、前方尿道狭窄が92.2%であった14)
 尿道狭窄症は感染症、膀胱結石、尿道憩室、瘻孔形成、敗血症からの最終的には慢性腎不全、尿閉に関連する合併症の結果として性生活を含めたQOLに、多大な影響を与える。
 長い範囲や全尿道狭窄の原因は、先進国と途上国では異なる。今日、先進国におけるほとんどの尿道狭窄は特発性または医原性が原因となる2,3)。医原性要因としては留置カテーテルを含む、膀胱尿道鏡検査、経尿道切除術および尿道手術の前段階にある。他、特発性、外傷、感染/炎症、および硬化性苔癬がある。開発途上国において、全尿道狭窄の最も一般的な原因はLSである(6。また数は多くないが、開発途上国における長い範囲の尿道狭窄の原因は、未だに淋病が重要な位置を占めている。 長い範囲、または全尿道狭窄の病理学的要因の研究は、それほど多くない。歴史的にみて、開発途上国の各地域で重要な原因でもある感染症は、尿道狭窄の原因としてしばし指摘を受けている15)。同様にそれは、海綿体下の尿道上皮の損傷が、治療過程で最終的に線維症を引き起こすなど、他のタイプの尿道狭窄の病理性にも関連してくる16-18)。排尿時の圧力による慢性膨満で、狭窄に近接した部位で化生が起こる可能性がある12)。微量漏出で化生組織を繰り返したことによる微少点からの尿漏出は、海綿の内線維化を引き起こす。当初この線維症は無症候だが、時間をかけて瘢痕や線維性プラークが症候性尿路閉塞症をおこし、尿道内腔の狭小化(狭窄)をきたす。尿道狭窄の病態は、タイプⅠとⅢ線維の割合が減少したことによる、細胞外マトリックスの緻密組織と正常な緻密結合組織線維症への変化、また尿道狭窄組織の、コラーゲン中の窒素含有量と平滑筋が有意に減少した、組織内窒素の減少に特徴がある19,20)
 尿道狭窄を引き起こすLSの病態は異なる。LSは進行性の炎症性慢性疾患であり、男性では包皮、亀頭および前部尿道を含み、これは自己免疫反応に関連している。原因には遺伝パターンと自己免疫反応が関連しているとされるが、詳細は不明だ。感染源は提示されている21)。通常はびまん性に包皮や亀頭に存在するが、亀頭にはまだらの白い斑状プラークが特徴的となり、増殖プロセスよりも萎縮性である(図1)。長い範囲の狭窄や全尿道狭窄症においては、舟状窩、陰茎尿道、そして最終的には尿道球部までを含んだ進行が知られている7,8)。LSによって誘発される尿道狭窄が、腺疾患の結果として、または陰茎尿道由来の慢性的な尿閉、媒介もしくは双方に起因するかどうか、これらは依然として不明である22)。長い範囲の尿道狭窄、前方尿道狭窄は通常、感染や外傷性後に発症するが大部分は医原性、特に尿道カテーテル、拡張および内視鏡的操作または特発性によるものである。 特にインドでは、LSが狭窄の原因として報告が多い6,8,9)  


    


4、診断的評価 
 診断的評価初期の重要なピットフォールは、理解が不十分で、全尿道狭窄に至る診断を適切に行えないことである。一般的に症候性狭窄は尿流量の弱さ、頻度、残尿、緊張や終末時滴下のような、進行性排尿合併症が見られる。また、閉塞性排尿障害としては、再発尿路感染症、精巣上体炎、血尿および膀胱結石などの合併症がある。これらの症状では、AUA症状指標のような定型化されたものを使い、適切な評価・検証を行う24,25)
 いくかのケースにおいては、身体検査で特に問題が見られない。その場合でも、陰茎については手術の既往、陰茎の奇形、LSの徴候や陰茎がんに関連した傷跡は、常に注意深く観察をする。陰部領域、海綿体の触診は細心の注意を払う。口腔粘膜移植が計画されている場合は、口腔内も特に慎重に検査をするべきである。
 全尿道狭窄の診断において、尿流流量計、エコー、膀胱尿道鏡検査は重要な情報源となるが、最も重要なものは逆行性尿道造影(RUG)と排尿時膀胱尿道造影(VCUG)である。後者の検査は狭窄部位、位置、長さ、重症度を詳細に検査して決定する(図2)。 特に内視鏡検査は、尿道形成(置換)前の末梢尿道の弾力性、表面状態の知見を与えてくれる。最終的にはエコー検査によって、術式に影響を与える尿道繊維化の程度を踏まえて(狭窄した)尿道の長さを決定する26)。    エコー検査は術前評価に重要な追加情報を得られるが、いまひとつ普及していない。ブローブと標的領域間の距離が解像度に影響するため、有用性としては球尿道よりは比較的近位の尿道に限られることも要因といえよう。                                           最も重要なことは、これらの画像診断法は尿道の修正部位を含む、病変部位の全てを確認できることである。重度の尿道内腔狭小化も、ほぼ均一に観察できる。尿道全狭窄は短い狭窄とは異なる解釈をする。狭窄があまり進んでいない部位は、通常の内腔と同様のものとして過小評価されてしまう。この診断的エラーを避けるために、尿道内腔が直径8mm以上展開しない場合は狭窄と考えるなど、幾つかの示唆がある。 診断の確定化にはしばしば内視鏡検査やブジー挿入、麻酔下での逆行性尿道造影が必要になることがある27)


 


5、再建術 
 ごくまれに特筆する症状がなく、外科的治療も不要なことがある。患者の大半は、尿道ダイレーションと尿道切開術のいずれも適応がなく、尿道全狭窄の治療をする場がない。本疾患の治療の方向性の一端として、複合的な障害のため外科的治療を受け、それにより深刻な合併症を持つ患者の典型例では会陰尿道造瘻術か、単純に恥骨上膀胱瘻カテーテル術を選択するようだ。
 全尿道狭窄は、複合的な尿道狭窄症状の集合体といえる。全尿道狭窄の定義は、論争の元となり続けているものの、研究対象群に均質性がないため、文献上の解釈に意味づけをしている。患者466人を含む最新の多施設設研究では、陰茎部の単一狭窄または多発性病巣かつ尿道球部(前方)で8cm以上の長い範囲または全狭窄、と定義している23)。いくつかの外科的再建術手順には、尿道前方全長狭窄の対処について記載がある(図1)。全尿道狭窄症の手術を予定する際、一部の外科医には一期的な手術を選んだ際に、再形成のために十分な移植組織があるか、また一期的・二期的手術を選択することへの懸念がある。全尿道狭窄症のうちLS関連では、一期的なOM(口腔粘膜植皮)による治療で成果を上げている。実際筆者らの経験でも、多段階のアプローチよりも望ましいことが明らかで、LS・泌尿尿道への外科的処置において彼らの主張は信頼性に乏しい6,23)
論争の主なものは、失敗率の高さだ:事実、尿道生殖器LSは皮膚疾患の最終段階で、手術によっても尿道内へ疾患が侵食していく。あまり一般的な事例ではないが、狭小化した尿道の多くは救助できない範囲で、他複数は、修復失敗例での狭窄症が感染・膿瘍・結石に関連した場合、Johanson法と同様の二期的形成術が望ましいと思われる。よくある事例として、尿道置換が選択される。尿道置換は皮弁、植皮またしばし両方を組み合わせて行われる。


表1:尿道狭窄と長い範囲の再建術での選択肢                   
皮弁 : McAninch flap(円形陰茎筋膜皮弁)  Q-falp変形(Quartey and Jordan) 二軸脱毛陰嚢皮弁(Gil-Vernet)
植皮 : 口腔粘膜(頬、舌、下唇)Kulkarni術   耳介後部皮膚(Wolf) 陰茎と包皮   膀胱粘膜   結腸粘膜
皮弁と粘膜
ステージ毎手順
 変法Johanson術、Schreiterの網状法
白膜尿道形成
会陰尿道造瘻術  


5.1皮弁;全尿道狭窄の再建において、後述するいくつかの皮弁が使われている。Johanson、McAninchは後述する、広範囲尿道狭窄再建術の円形陰茎筋膜皮弁を考案した28)。円形陰茎筋膜皮弁は、主要な血液供給を受けるBuck’sの筋膜を使い、陰茎遠位端から挙上する。McAninchの報告では、陰茎部を含む前方尿道と尿道球部複合型狭窄を起こした66人の男性にこの皮弁を使用して,一期的に手術を行った結果がある29)。構造の長さは24cm(平均9.08cm)まで測定する。皮弁は、尿道置換の筒状形成皮弁と上張り法に使われる。いくつかの事例で、補助組織の追加と近位の植皮が必要となった。初期成功率は79%、この方法を追加してからは95%に上昇した。通常、再狭窄は近位および遠位吻合部で発生した。殆どの患者では再建のため、円形陰茎筋膜皮弁を長さ12~15cm採取しているが、うち約90%の者が割礼を受けていた。筒状形成皮弁による、尿道再形成術後の患者としては、あまり満足いく結果は得られていない。世界的にMcAninch術は全尿道狭窄に信頼性のある外科的選択肢とされており、多数の刊行物、文献で情報を手に入れることができる。McAninch皮弁の主な利点は、膜様部から外尿道まで、尿道全ての分野で利用できる汎用性である29,30)。それというのも、コンパートメント症候群では、著者は砕石位での皮弁採取をする患者が、5時間以上砕石位におかれている場合発生した別々の2例を経験しているため、砕石位は2~3時間とすることで発生を減らしている。
 Q皮弁はMcAninch皮弁の変形である。これは陰茎全長の腹側正中線縦に加え統合することで、このようにQの文字に似るためそう呼ばれる。同様にQuarteyによる「ホッケースティック」皮弁の構成をみよう31)。Moreyらは、平均狭窄長15.5cm(範囲12~21cm)の患者15人において、Q皮弁による一期的尿道再建術の経験を報告している。全ての患者に包皮があり、コンパートメント症候群を避けるため、仰臥位を第一選択として皮弁採取をした32)。皮弁は陰茎を伸展しアウトラインを描き、細心の注意を払いdartos筋膜への血液供給を維持しながら皮を剥離(degloved)する。Q皮弁縫合はMcAninch皮弁の手順同様、腹側尿道切開術野に被せるように4-0吸収糸にて縫合を行う。一般的に舟状窩は 亀頭翼作成や亀頭保存にて再形成される。振子部尿道を皮弁補強にて縫合した後、患者を砕石位にする。皮弁は十分に余裕を持たせた陰嚢皮下トンネルを通し、会陰部へ移動して配置する。ここにみられる皮弁法の潜在的な利点は、長い領域かつ複雑な狭窄の一期的再形成を可能にすること、又、病的な状態、時間を要する組織移植術、追加手術を回避することができることにある。
 これら二法は、泌尿器科再建術の中では最も困難で面倒なものの一つで、多くの人手を要するものである。上記二種の皮弁の一般的な合併症として、特に未熟な外科医による陰茎皮近位から皮弁にかけての壊死がある29,30)。場合によって陰茎皮膚壊死は、創傷感染に始まり、最終的に皮弁壊死、皮弁損傷となる可能性がある。
 1997年、Gil-Vernetらは尿道形成における別個の皮弁として、後述の二軸脱毛陰嚢皮弁を報告している33)。彼らは20cmx2.5cmの皮弁を使い、尿道球膜様部から外尿道口に至る前部尿道部の再建をしている。皮弁は陰嚢皮膚由来で、Dartos筋膜、外精筋膜、精巣挙筋線維/筋膜、内精索筋膜と陰嚢隔壁を含む。膣粘膜は含まれない。精巣挙筋の間の血管吻合(深)と陰嚢(浅)皮弁への血液供給叢は、この二軸の皮弁に含まれている。筆者は本法を全尿道狭窄症の10人を含む37人の男性に行った。これら10人の患者のうち2名は、植皮の収縮に起因した失敗により会陰尿道造瘻術が必要になった。これらで、誤った陰嚢皮膚の脱毛が、硬化症、血管病変や陰茎腹側湾曲に繋がる問題もある。にも関わらず筆者は、本法は陰茎陰嚢角から前立腺頂点までの尿道再建に理想的な皮弁と考えている。解剖学的接近性、転用可能な良質の組織、尿に対する良質な耐久性を秘め、皮脂腺も豊富であることから、筆者が尿道球膜様部尿道形成術を行う際の、第一選択肢としている。また、陰嚢皮膚皮弁は陰茎の皮膚皮弁と比べて、硬化性苔癬を発症しにくいと確信する。筆者らが言及した全ての潜在的な利点にも関わらず脱毛や上皮除去、そして皮弁の転位はそう簡単ではない。脱毛は非常に時間がかかるプロセスである。尿道形成術失敗後、尿道床の深刻な線維化は、排尿後や射精機能不全などいくつかの問題、皮弁反転また偽閉塞形成などQOLへの支障が大きくなり、血流供給の保たれた皮弁を当てることが必要だ30)。なお、一般的に尿道再建に皮膚皮弁を使うことは。置換尿道よりも技術的に困難を伴う。McAninchとMoreyらの研究では、平均狭窄長9cmの患者について筋膜皮弁再形成による初期の全体的な成功率は93%であった。移植補強の13%、及ぶ筒状形成修正の58%において、再狭窄が認められた29)

5.2:植皮: 世界的に見て、尿道再建術に皮弁を使うことが標準的選択肢となってきている。理論上は血管新生が必要なため、一般的な植皮片というものは信頼に足るレベルに至っていない。とはいえこれらは比較的容易に、素早く採取して、配置することができる。両皮弁や植皮による再狭窄率を示すいくつかの研究がある34)。筆者らの意見としては、再狭窄率が変わらない植皮であれば、採取と配置を素早く、決められた手順で行うべきと考えている。植皮より皮弁が有利な具体的な適応には:複数回の修正術失敗後、放射線療法による局所脈管切除、重度の末梢血管不全および、局所感染これらは全て、植皮片の能力を低下させる。植皮片による修復が好ましい理由を要約は上記の通りだ。 植皮片と皮弁いずれも、全層皮弁は分層皮弁/植皮よりも収縮する傾向が少なく、パッチ植皮片はチューブ入り植皮片よりも良い、尿道周の再形成が必要であれば二期的手術が必要になる。 

 

(図3)Kulkarni術の概略
[左側] a,会陰切開正中線分岐は、近位尿道球部へのアクセスに優れており頻用される。b,前部尿道を完全に移動した、会陰からのアプローチによる全尿道切除術。ゲルピー開創器を使用。 c,陰茎亀頭は反転し、尿道最遠位部切開のために、会陰切開部へ移動している。 d, 外側背側尿道切開術の前処置としてアンカー縫合を行う。 e,近位尿道球部から始まる、外側背面の尿道切開術。  

[右側] a両側頬内側からは、下口唇を含む頬粘膜移植片を採取。b,180度回転して完全に移動した尿道は、背部表面から外側尿道切開術アプローチをおこなう。口腔粘膜単体を広げたところ、海綿体の白膜に縫合した。植皮片に沿ってキルティング縫合を行う。 c, 尿道縁の側は、同側の植皮片をついだ部分へ縫合する。d,尿道植皮吻合の左側の縫合  e,縫合が完了し、植皮片は尿道板によって覆われている。

 尿道再形成では口腔粘膜が根強い人気を持っており、長い範囲と全尿道狭窄修復術において、類似の新技術が導入されている。2000年にKulkarniらは、前部尿道部の狭窄修復のために 当初は口腔粘膜の移植片を活用した発表をしている。このように一期的な会陰部単純切開を介して、解剖学的構造、機能と審美的な陰形を保存し続けている35)(図3)。2009年には同じ研究者らが、後述する海綿体の一方のみで尿道の解剖に基づき、より低侵襲性方法を推奨して、原型となる技術の変更点を発表した、図のようにして、尿道全体に神経および血流供給を維持している36)(図4)。2000年には、前部尿道の長い狭窄に対し、口腔粘膜植皮による尿道形成が、Kulkarniらによって最初の報告がされている37~40)。これらの著者は全て、対処可能な合併症発症率を伴う中期のフォローにおいては良好な結果を報告している。2004年、Guputaらは、会陰への影響を最小限に抑えた腹側矢状断端尿道切開による陰茎背部植皮置換による、前部尿道狭窄患者と尿道全狭窄症患者2例について報告をしている40)。Kulkarni法は前部尿道全体が会陰のみの切開で修復される単一技術、単一素材による置換術である(図4)。全尿道狭窄疾患患者117人の治療成績で、1998年6月から2010年12月(2年半)の期間における後ろ向き研究では、全体の成功率83.7%だった。狭窄の平均長は14cmで追跡期間の中央値は59か月であった。ほとんどの再狭窄は近位吻合部で生じ、いずれも全長狭窄再発はなかった6)。本法の主な利点は、侵襲が少なく一期的に実施できることにある。2回(またはそれ以上)に及ぶ手術を受けるトラウマを避け、術後半年は二分陰嚢で生活を送る必要がある。また片側切開のため、陰茎、尿道および神経血管束への損傷リスクは最小限である。本手順は陰茎瘢痕とならず、会陰部を避けるため、尿道口部の尿道下裂を起こさない。

 最近では、舌粘膜を使用した尿道形成の報告例が複数ある41-45)。舌粘膜移植片は、頬粘膜とよく似た特徴がある41,42)。Dasらは、長い前部尿道狭窄を有する18人の男性に、舌粘膜単一移植片を使用して治療を行った41)。ほとんどの症例では、病因にLSまたは感染があった。全体の成功率は83.3%であった。しかしながら、腹側尿道狭窄に関する個別の結果は見られなかった。舌粘膜の特記すべき点として、正中線を横切り舌の反対側まで連続して採取することができるため、全尿道狭窄全長への移植片採取が可能になることである。
 このような症例での再建に適した皮弁、または植皮の選択肢としては表1(原著ページP6)に記載した通り。熟練した手技では、10cmx1.5cmの口腔粘膜植皮片を、それぞれ左右から容易に採取できる。必要に応じて、舌粘膜植皮片を更に採取することもできる。LS(硬化性苔鮮)に罹患した患者の多くは、割礼により亀頭が傷ついていた。LSでは生殖器からの皮膚は使用できないし、使うべきでない。包皮遠位陰茎皮膚植皮片は、前部尿道形成術で背側へ上張りとする。多くの研究で、全尿道狭窄患者は少数派だった46,47)。失敗例の多くは、皮膚移植片を陰茎尿道部へ配置した場合に起こっている。過去の手術では陰茎皮膚も使用していたが、陰茎皮膚が十分でなかった場合には頬粘膜が最優先の選択肢とされていた46)。男性の全尿道狭窄では、耳介後部皮膚も高い成功率を期待できる選択肢とされてきた48-50)。耳介後部皮膚は薄く、皮下組織が密なので、植皮片や機能的な結果としては、他の非生殖器系皮膚植皮片よりは優れている。しかしAndrichとMundyは、LS患者の尿道形成術に皮膚移植片を使用すべきではないと警告している。LSは皮膚疾患のため、植皮片にも影響を与える可能性がある49)
 論争の側面は、植皮片配置の部位である。特に振子部尿道腹側への植皮片配置では、殆どの場合結果不良である。球部尿道では、長く複雑な狭窄に腹側植皮を使用しない限りは、同様の結果となる。これらの狭窄については、皮弁または二期的形成による複数の報告がある46)。通常の場合、背側植皮片の配置は最善の方法で、全尿道狭窄においては第一選択肢となる6, 23, 51-53)。球部尿道形成術では、腹側/背側両方の頬粘膜植皮片を二重に使用することも提案されているが、4cm以上の狭窄がある場合、筆者らは推奨していない54)。つまり、本法は長い狭窄や全狭窄症に対する方法とはしていない。
 結腸粘膜は全尿道狭窄症の再建に用いられている55)。この植皮片は、腹腔鏡的アプローチまたは下腹部切開にてS状結腸から採取する。
S状結腸粘膜から長さ12~15cmの全層植皮片を採取できる、結腸は端々吻合で縫合する。伸ばしていない結腸粘膜植皮片は、適当なサイズ(長さ15~22cm 幅3cm) に整え、新生尿道を形成するために16~18Frの縦溝つきシリコンカテーテルに巻きつけ、5-0吸収糸で縫合する。新生尿道と生来の尿道近位端との間で、端々吻合をする。新生尿道の遠位端は亀頭を通して新外尿道口を形成する。Xuらの報告では、長さ11~21cm(平均15.1cm)の複雑な尿道狭窄に、結腸粘膜植皮術を実施した35例では、5人(14.2% )に再狭窄が発生している。しかし再発のうち3件は、尿道形成術とは無関係だった。つまり、結腸粘膜植皮による管状尿道形成術は成功し、パッチによる尿道形成術よりも再発率が低いということになる。とはいえ、本法は更に詳しい研究、確認が必要なのだ。他の選択肢がなく、それも使えないより複雑な症状の患者に対する代替策として考えるべきである。


5.3:皮弁と植皮の組み合わせ:
 専ら、複雑な全尿道狭窄に長い皮弁を使うことは、技術的には挑戦的な試みであり配置の決定、手術手順自体に起因する長時間の手術時間が罹患率に関連してくる。十分な長さの皮膚皮弁は、特に割礼を受けた男性やLSの罹患が有る場合採取困難な場合がある。その場合の選択肢としては、短い皮弁を植皮片と組み合わせて、球部尿道の近位に配置するのが合理的といえる51)。Wessellsらは、平均18.3cmの狭窄を有する7例の患者に、陰茎円形包皮皮弁と近位に配置した頬粘膜植皮片と組み合わせた手術を行っている56)。術後16ヶ月の経過観察において、全体の成功率は88%であった。残念ながら、著者らは全尿道狭窄特有の結果について別個の報告をしていないが、再狭窄や他皮弁関連リスクが高いことから、管状再建術を避けることの重要性を強調していた。            頬粘膜は置換尿道形成術に選択される植皮材料となっているが、長い領域また全尿道狭窄において完全に再構築するには不十分なことがある。 頬粘膜と生殖器の皮膚弁を組み合わせることは、長い領域または全尿道狭窄の一期的再建には、耐久性がある代替部位であることがわかる51)

5.4:段階ごとの手順:
 現在のところ、合併症のない尿道狭窄の大部分は一期的手順で管理ができる。というものの、尿道の広範囲な瘢痕形成、感染、瘻孔、複数回にわたる尿道再建施行、除去された尿道の残り、植皮片や皮弁関連因子などの局所症状に関連した複雑な狭窄、又は放射線照射後の状態では課題を明確にして、段階的に処理をしていく。長い尿道狭窄の中には、段階的な再建方法も選択される。これらの状況としては、尿道再建には不十分な隣接組織や、血流の状態が不十分であることが関連している。LSは一期的手順で再建できるが、状況によっては複数回手順を経ることが、病気の経過には有効で妥当な選択となることがある57-60)。尿路変更のために行う会陰吻合術は、海綿体の漏出を避け、迅速かつ尿道組織の良好な治癒を促す。

 古典的な二期的手術はJohansonが1950年代に発案した61)。Johanson法は狭窄した尿道が緻密になる後、第一期の術後4~6ヶ月後に第二段階の手術を行う(図5,6)。以前は、陰嚢、会陰皮膚を尿道再建に使用した。Johanson法が優れているのは、尿道再建術の時代から離れた頃から、どのタイプの狭窄にも対応可能であることだ。本法の欠点は、陰嚢に生えた陰毛や会陰皮膚を使うことにより、再建尿道におこる慢性尿路感染症、膿瘍、瘻孔、嚢胞形成がある。


 1980年代、Schreiterは陰嚢や会陰皮膚の使用を避けるため、無毛の網状植皮片を使う二期的手術を報告した62,63)。この方法であれば、全てのタイプの尿道狭窄に対応が可能となった。特に、重度の組織瘢痕による複合的狭窄、また尿道再建に必要とされる健康な陰茎皮膚が 不足する場合には、それが最善策であることは明らかである。近年、他の著者からも尿道狭窄前の頬粘膜移植を伴う、二期的Johanson型尿道形成術の報告がある。 陰茎尿道狭窄の場合、PattersonとVhappleは瘢痕化した尿道を完全切除した後、背側頬粘膜上乗せ植皮術を伴う二期的手術をよく選択している64)
段階的再建は、患者にとっても不便は大きく、複合的全身麻酔薬による罹患リスクの増大もその一つだ。 更に、二期的手の後の修正が一般的となっており、患者の半数で三期にわたる修正手術が必要となったこともある65)

5.5:白膜(Mouseur)尿道形成術 
 Mouseurが1969年に発表したのは、尿道上や海綿体下溝から、白膜によって新生尿道を延伸し、なおかつ内腔の連続性を保つ、皮弁や植皮を必要としない方法だ66)。近年この方法に関心が集まり、短~長い範囲の尿道狭窄に対する尿道形成術で、良好な成功率を高める白膜を使う様々な方法が報告されている67,68)。筆者らは、咬みタバコの咀嚼による不健康な口腔粘膜や、全尿道狭窄の修復に必要な植皮片が得られない場合に有効な技術として報告している69)。SnodgrassとBushらによって、管状切開板(TIP)の尿道形成術において、尿道背側板の切開後に露出した内膜で新生尿道の上側を形成する試験も行い報告をしている70)。筆者らは、再建泌尿器科領域における皮弁術は手間がかかり冗長だと主張している32)。口腔粘膜植皮術は、中程度の狭窄には非常に有効だが、長い狭窄では適応外のことがある。というのもいくつかの研究では、背側上張り植皮で口腔粘膜および陰茎皮膚植皮片では類似の結果を示しいずれも、皮弁より優れていることが証明されたものの、この研究者は植皮片の種類ではなく、植皮片の部位よりも最終的には手技が成功の成否を分けることが示唆されている71)。他の研究では、腹側上張り植皮片は背側上張り植皮よりも重大な欠点を有することが、報告されている。移植片を尿道溝上の背側へ配置することで、合併症が減少すると主張されている72)。Mouseurによって提唱された概念に基づき、Barbagliらは背部上張り植皮術を導入することで、植皮へは海綿体からの血液供給が豊富であることが予測され、それにより植皮が良好に生着していることから背側植皮が優れていると仮定されている73,74)。 つまり、背側上張り植皮術が、腹側を使うよりも良好な結果が得られると仮定した場合、その成否を分ける要因は植皮のどこを使うかではなく、どこに配置するかということになる75)。 結論として著者らは、Mouseurの白膜尿道形成術は短時間で実施できる、移植後合併症もなく技術的にも容易で、頬粘膜尿道形成術に匹敵する成功率と結論づけている。尿道鏡粘膜生検によって確認できれば、内腔の拡張から尿道上皮の再増殖まで、十分に白膜がその任をなし得るだろう。無論これには更なる研究が必要である.

 


6、成功例と合併症=
 一般に尿道形成術は、直視下の内尿道切開術をはるかに上廻る高い成功率となっている。尿道形成術後の重篤な合併症は比較的稀で、術後早期に3%、術後晩期のフォローアップ中で18%ほど発生している76)。文献中ほとんどの報告は、外科医、術式、狭窄タイプも異なり不均一なデーターが含まれている。合併症に言及すれば、さまざまな経過が混合している。文献によくある落とし穴として、一連の成功率を比較することがある。やはり将来的には、再建泌尿器科領域での合意形成が必要である。一般的に、尿道形成術の合併症に直接関連するのは、狭窄の部位、狭窄の長さ、手術手技、使われた移植組織のタイプである(表2)。尿道合併症術後の合併症は、早期または後期に出現する主要、および小グループに分類される。殆どの軽度/マイナーな合併症は通常、軽度で一時的であり、簡単な修正で対応可能だ。
重度かつ複雑な大きな合併症になると、通常は尿道形成術の失敗となる。本稿では、前部尿道の長い狭窄、または全尿道狭窄の再建手順に関連した合併症に、焦点をあてる(表3)


表2:全尿道狭窄術でのメジャー、マイナーな合併症                    
メジャーな合併症                   マイナーな合併症 
 早期:血尿。RUG(逆行性尿道造影)漏れ。口腔の      早期:口腔内麻痺。食事・会話時の漏れ。会話の障害、
   不快感。創部圧迫。副睾丸炎。陰茎斑状出血        会陰知覚鈍磨。陰嚢知覚過敏。陰茎疼痛、陰茎短縮。
   陰茎腫脹、。陰茎皮膚虚血/壊死。尿路感染。        排尿後の尿漏出。腹圧性尿失禁。排尿の広がり
   創感染

 晩期;直腸損傷、尿路感染症              晩期;狭窄再発、性機能障害、尿道索、瘻孔


表3 : 全尿道狭窄形成術においてよくある手術手技由来の合併症 

術式 早期合併 晩期合併症 割合
皮膚皮弁 一過性疼痛と瘻孔(解決済み) 瘻孔 37.5%
口腔粘膜植皮 尿路感染症、陰茎浮腫、出血 尿道索。瘻孔。ED。亀頭冷感、口腔、唇の不快、麻痺。 17.5%
二期的Johanson UTI,創部裂傷。陰嚢膿瘍。陰茎痺れ。副睾丸炎 植皮片拘縮。瘻孔。尿道索。亀頭冷感 35.7%
会陰尿道形成と
一期的Johanson術
UTI,創部裂傷。一過性疼痛と麻痺。 尿道索。瘻孔。 24.1%
皮膚皮弁と植皮術併用 創部血腫。肺塞栓。陰茎皮膚虚血 尿道索。瘻孔。 23.5%

 頬粘膜植皮片は、現時点で、尿道手術の標準的な使用材料とされている。 頬粘膜上張り術を含む外科的処置では、皮膚筋膜皮弁に比べて成功率も高く失敗する割合も少ない23, .46, 74, 74, 76)。ある報告では、筋膜皮弁の合併症は3~56%とされている77)。Warnerらによる複数施設での研究にでは、全尿道狭窄と長い狭窄に対し複数の外科的修復を行った場合の、合併症率を報告している23)。合併症率はコホートで、皮弁なし(14%)と比較し皮膚筋膜は(32%)優位に高かった(P=0.02)。本レビューで二期的Johanson尿道形成術は、口腔粘膜植皮法(BMG)ほどの成功率(64% vs 82.5%)にはならなかった。皮膚を用いた二期的Johanson尿道形成術では、BMGより不具合が多い(再発率66.7%vs28.3%)。[全尿道形成]や長い部位術後患者の綿密な経過観察は、初期および後期合併症の重要な発症率を明確化するだろう76)
 会陰神経痛や神経失調は球部尿道、後部尿道形成、または重症の砕石位のいくつかの手術でよく知られた合併症である(根治会陰前立腺摘出術、および尿道瘻孔修正術78-80)。複雑な尿道形成術後、局所的に見られる一般的な合併症は、表在性腓骨神経麻痺、横紋筋融解症、下肢コンパートメント症候群が含まれる。神経症状のいくつかの原因は特定されているが、機械的な神経圧迫が最も一般的なものだろう。通常は6~8週間以内で、自然に解決する。近年の研究で、このタイプの手術において砕石位をとる時間の短縮と患者の身体保護のプロトコル整備により、局所的な合併症率は3%を超えていない。筆者個人の報告も、重篤な神経症状の発生率はこれらの報告に準拠している。
 殆どの合併症は軽微なもので影響は少なく、容易に修正できるが過去に発表された(40%)数よりは多く発生しているようである76)。これらの合併症は患者にとっては深刻で、術前説明で議論されるべき事項である。


7、性機能への影響

 男性の性機能への影響(陰茎の知覚、勃起、射精機能不全)というものは、通常は過少報告されている。もっともその傾向も最近は変わってきた。Courseyらが2001年に行った研究は、前部尿道形成後の勃起不全について、アンケート評価に基づく結果を報告している。OMGによる尿道吻合後、患者の19~27%でEDが発生している。Courseyらは、長い狭窄をもつ男性に一過性の勃起不全のリスクが高いことを仮定しているが、全体として術後の性機能不全率は、割礼によるものよりは高くなかった81)。このような国際勃起機能指数(IIEF-5)または O’LearyBrief 男性性機能インベントリ( BMSFI)などによる研究で、最近発表されたものの大部分は、尿道再建術が勃起や性的衝動を損なうことを示していない。若年層では射精機能も改善している82~86)。一方、勃起不全は尿道形成術に関連しているものの、その発生割合は殆ど知られていない。Blaschkoらによるメタ解析研究では、前部尿道形成術後の突発性勃起不全発生率は1%としている。ただ殆どの場合、勃起障害は一過性で、初発から12か月以内で改善している85)。別の研究では、前部尿道形成後は約40%に一過性の勃起がみられたが、殆どは6か月で回復が観察されている83)。同じくBlaschkoらは、2006年に高齢者や術後に勃起不全が高い確率でおこる関係性を説明している82)。2015年にはXuらが、複合的な全尿道狭窄症に勃起不全が特異的に影響する研究発表をしている。唯一のマイナス要因は、後部尿道の狭窄が拡張されており、その場合は減損が認められた86)。射精機能不全は、おそらく尿道形成時の皮弁または植皮片を腹側に配置された患者に報告されている87)。射精機能不全は、背側上乗せ術後の患者で報告されていない77, 87)


8、利益相反   
 一期的BMGによる修復は、長い狭窄と全尿道狭窄症の患者にとっては、優れた選択肢となる。閉塞性または尿道板欠損例では、BMGと二期的Johansonによる尿道形成術は実行可能な代替案となる。LSでは一期的BMGで、二期的修正よりも良好な結果を得ている。BMGが生着しない場合、皮膚皮弁(PU-flap)で同様の成功例がある: ただ、これらは合併症発症率が高い。他の選択肢がない場合を除いて、皮膚植皮術は避けるべきだ。 最終的に皮膚皮弁の果たす重要な役割は、複合的な尿道形成の失敗例においても軽視できない。
  現在のところ、尿道再建に使える選択肢は、永久的な構築をするものと、古典的と革新派の両方に焦点を置くように注目していくべきであろう。陰茎長さ、尿道索の原因や審美性にも影響がでる場合は、外科手手術をするべきではない。口腔機能の遅発性永久後遺症を回避するために、OMG後は口腔疾患罹患率に注意が必要だ。また尿道再建法の中には、最終的に性機能に影響を起こすものがあり、性機能にも注意が払われるべきである。

利益相反 本論文の発刊にあたり利益相反はない。