乳房、尿道延長

<FTM>


1、乳房切除(mastectomy)


 

 

 

 

 

 

 

 

現在の乳房サイズで術式は異なるが、基本的には乳房、乳腺、余った皮膚の除去である。

○脂肪吸引(乳房縮小) 
  あまり大きくない人が適応。脂肪を吸引するカテーテルが入るように、腋の下を小さく切開する。サイズを小さくするだけで乳腺はそのまま残っている。
○乳腺切除
   ①乳腺一文字型                
   ②ドーナツ型            
   ③横一文字

 

  手術の方法はいくつかあるが、術式は乳房の垂れ具合、大きさ(A~Eカップなど)によって決まる。垂れ具合が軽度であれ
ば、乳輪に沿った切開で、切開創を医療用テープで保護し縫合をしないこともある。 創長が長いほど治療費が高くなること、
目立つことはいうまでもない。皮膚のたるみが多ければ、ニ期的手術や、乳頭形成手術で自然な見た目に整える。乳房切除だけであれば、硬膜外麻酔で行いフォローは外来通院となるため、術後、ドレーンを入れて2,3日後に再診という流れが多い。乳房摘出でも全身麻酔で行う場合がある。海外のオペでは、乳房と次の子宮卵巣摘出も、同時に行うこともある。
※岡山大学医学部付属病院ジェンダーセンターに症状説明書あり

症状説明書:陰茎形成尿道延長造膣説明SRS料金(2014年12月現在)

 


2、子宮・卵巣摘出(hysterectomy/ Oophoretomy)


  開腹術、内視鏡的、または膣からのアプローチがある。外見上、傷の目立ち具合は、開腹>内視鏡>経膣である。戸籍の性別変更条件となるこの性腺除去と同時に、尿道延長を行うことが多い。
  よくあるトラブルが、排尿障害である。子宮を摘出する際に、子宮卵巣を支えている周囲の靭帯も切除したり神経を触ることで、一時的に膀胱や尿道のコントロールがしにくくなることがある。尿意を感じにくくなったり、残尿感がある、膀胱いっぱいに畜尿しても排尿ができなくなる、など。




3、尿道延長(Urethra lengthening )


  子宮卵巣を摘出しただけでは、外見上女性外陰部のままである。尿道口は足元へ開いているので、マイクロペニス形成をしたときに、尿道の長さが数センチ不足する。膣壁を剥がして皮弁とし、新しい尿道を作る。これで尿道延長するが、さらに小陰唇を左右から被せて補強とする場合もある。
  子宮・卵巣摘出後の膣閉鎖(Vaginoplasty)と尿道延長を同時にするのは大がかりになる。子宮の前後には直腸と膀胱があり、周囲も血行が豊富だ。ただ閉鎖するだけで分泌物のいきさきがないこと、また膣周辺に豊富な血管、リンパ管を損傷する恐れがある。私が受診した日本の病院では、膣閉鎖による大出血リスクもあり今からの閉鎖は大変だ、と説明をしていた。膣は「筒」なので、上にある子宮・卵巣切除後、天井をそのまま縫合する方法、膣の粘膜同士を(表層を薄く切除して)合わせて閉鎖する方法などあるが、オプション別料金で膣閉鎖をするところが多いようだ。靭帯による支持もなく、女性ホルモン分泌が低下する状態で膣は、徐々に萎縮して、表面上から窪みは認められても、挿入できるだけの容量はなくなる。大っぴらに見せつける場所でもなく、バルトリン腺があればセックスに便利。リスクを冒して閉鎖しなくても良い気もする。


○ 尿道ダイレーション

  女性型であるFTMの尿道をクリトリス横まで延長しておくことで、ミニペニス、またその先の陰茎再建をした時の準備段階となる。ないものを作る、という尿道延長は通常、陰唇や膣粘膜を使用することで皮膚弁に比べて萎縮の頻度は少ないといえる。それでも”作りモン”であるため、狭窄のリスクはある。陰茎形成を行った場合は、延長した尿道と陰茎内部の形成尿道との吻合部狭窄が最も多い。尿道延長をした段階で、尿道ダイレーションを開始した方がより安全といえるだろう。

 使用物品はこれまでもブログに度々書いているが、amebloは画像や書き込み制限のハードルがけっこう高いので、動画等はこちらを参照されたい。     ALT(前外側大腿皮弁)Phalloplastyの第一段階で、大腿部へカテーテルを埋め込んだ場合の動画はこちらの記事だが、方法としてはこれが前腕であっても、下腿であっても理論は同じ。実際形成したミニペニス、もしくは陰茎で尿道ダイレーションを行う手順もブログ記事に掲載しており、手順としては極めてシンプル。動画では中途半端な長さだが、延長した尿道や陰茎長さが何cmであっても方法は同じである。                                < 使用物品 > KYゼリー(タイではQCゼリー)、任意のカテーテル(14Fr~24Fr)、保存容器と消毒液


4、ミニペニス(metoidioplasty)


  

 

Metoidioplastyはミニペニス、マイクロペニス、小さいオペなどと呼ばれる。Phalloplastyが身体の他の組織を使い体表面に傷が残るのに対して、ミニペニスでは最小限の傷で済む。ホルモン摂取で肥大したクリトリスを、周囲の小陰唇などを寄せて形を整えるのがスタンダード。発生学的に陰茎と陰核は同じものなので、勃起はする。肥大の程度が大きければ、小児くらいの陰茎形成をできる者もいる。また、陰茎両サイドに鼠蹊部からの靭帯を添わせ形成することで、より勃起時の支持力を高める形成方法もある(Centurion)
身体の他の部分に傷が残らない、ローコストだが、このままでの立ちションは難しいので、一工夫が必要。

phalloplasty.net/

ミニペニスの形成失敗後、再建例症例論文 こちら